TAIFU BOY

見たものの記録、日々の記録

19.11.22

ひとつずつ情緒を片付けていかないと。

むりくり予定を空けて「細い目」と「タレンタイム」「帰れない二人」をみた。「細い目」「タレンタイム」はヤスミン・アフマド監督がえがくマレーシア。マレーシアは多宗教・多民族。映画も、マレー語・英語・広東語が会話に混在しており、登場人物も様々。優しく、チャーミングで、コミカルで、けれども悲しく、さみしく、やりきれなくて……よろこびも憎しみもひとの両輪であり両翼であり、そのどちらもをえがいているけれど、けっして悲しい方向だけにかじを切ることはなかった。そこに、人へ対する愛情だとか、希望のようなものをかんじた。

「細い目」でジェイソンを演じた俳優さん、しらべたら、ヤスミン監督と同じ広告代理店勤務で、オーディションを受けたという経緯らしく、主演はこれ一作のみ。現在も広告代理店勤務らしいけど、ちょっと驚いてしまう。すっっっごく良かったから。最初、この子がおかあさんへ詩を読むところから始まるんだけど、その声や、お母さんのとなりに膝を立てて座って、髪をさわられて避けるしぐさとか、ほんとうに、多感な男の子のあれこれが詰まっていた……。もったいないって思ってしまうけど、これはわたしのエゴ。

ほんとうにとても素敵な映画。

 
「帰れない二人」は、中国の映画。2001年から2017年の中国という国そのものの変化と共に、大同というふるい炭鉱の町で生きていたやくざもののビンとチャオの人生をえがいていた。チャオはビンをかばって五年服役するけれど、さきに出所したビンはすでに他の恋人をつくっていて……。チャオはしたたかに生きぬいて、最後は元いた大同へもどり、渡世を貫くんだけど、彼らの持ち物がガラケーからスマートフォンにかわり、子分の服装は今どきらしくなった以外、生活になんの変化もない。新エネルギーの開発や、ダムの建設、オリンピックの開催、中国がどんどんと変容・発展してゆくなかで変わらずにいるチャオと、変化の波に取り残されてもがいているビンと。観た後、なんともいえずどんよりとした気分になった。帰れない二人は、元いた場所へ帰れない二人ではなくて、どうしてもお互いの元へ帰れない二人だ。