TAIFU BOY

見たものの記録、日々の記録

18.12.17

ダブルミンツを見た衝撃は、ボーイズラブコミックの映画化だからというのでなく、田中俊介というひとが演じた「みつお」の衝撃だった。

いやー、良かった。

同じ名前に運命的なものを感じていたふたり。高校を卒業して『また』出会ってしまったふたり。離れていた数年のうちのみつおとミツオの変化が、ふたりの関係にも変化を生じさせているのがとても良かった。

原作を知らないし、わたしは映画の印象のみつおとミツオのことしかわかんないけど、高校を卒業してからのみつおのこと考えたら、泣いちゃう。高校がピークだったのかな、とか。ああいう乱暴なふるまいを、要領よくやって「みつおクン、こえー」とか「おもしれー」とか羨望まじりに言われて、不良っぽさと人懐っこさが絶妙で、女子にも遠巻きに憧れられるような、そういうのって卒業と同時に高校に置いてくるものだとおもうんだけど。みつおはうまく置いてこれないまんま卒業しちゃった感があって、オトナになれない半端者で、それがたまんなかった。

だからミツオと再会したとき、ミツオはもうきちんとオトナをやってるから、いつまでも子どもっぽい物言いと顔つきをしているみつおとの対比がすごくって(もちろん中の人の年齢差もあるんだけど)、手のかかる猫みたいなみつおから目を離せなくなってしまった。

「断髪式」みたいなひどく屈辱的なことをされてるみつおは、なんで佐伯の元を離れないんだろうと思ってたんだけど、舞台挨拶で、佐伯役の小木さんが「みつおは可愛い小悪魔で、ミツオは堕天使」っておっしゃってたのが答えなのかなあって。断髪式はそれはもうひどさのオンパレードだし、みつおが裏切ったときの罰の与え方とかも厳しいんだけど、かれを組員にはさせないし、自分のとなりに座らせるし、警察のひとがいうようにはたからみれば「お稚児さん」。でもって、みつおはみつおで、佐伯が自分のことを可愛がって手放せないのをわかったうえで甘えてる。

断髪式のDVD、出てくる男たちの姿を見ると(ゴーグルマン)、最初から裏DVDをつくるつもりで撮影してたんだなと思う(みつおだけ顔出し)。最後、佐伯が顔を出しちゃったからか、多分このビデオはお蔵入りになったのかなって勝手に想像してた。佐伯は「さえきさん、さえきさん、」って泣きながらヤられてるみつお見てたら可愛くなっちゃって、手元に置いときたくなったのかなって。

そうそう、わたし、警官を撃って、自分も撃たれたみつおが、どうしてもミツオを巻き込みたくないと思ったときに頼るのが佐伯だということにもちょっと驚いたんだよね。もちろん佐伯の指示だから連絡を取り合ったんだろうけど、この人は、自分だけでなんとかするというふうにあたまが働かずに、頼る先を探してしまうのかなと思うとまた泣けちゃって。
佐伯も佐伯で、お医者は用意してくれるし、逃がしてくれる。

みつおと出会ってからのミツオの狂い方もめちゃくちゃ良かったな。
みつおより肝がすわってるんだけど、みつおがいなくなるとめちゃくちゃになる。みつおはミツオのために離れようとするけど、ミツオには離れるつもりがいっさいない。「アンドロギュノス」のくだりとか、見るもの、きくもの、なにもかもが「おまえはみつおと離れては生きてはゆけない」と天啓のごとく示されて見えているのではないかと思った。
DVDを見たあとも謝らないし、「一緒に死ねるか」といわれても答えない。なにがどう転んでも、自分がみつおのそばを離れないことは「きまって」いることだから。

このふたりは一緒にいたら無敵になるんじゃなくて、一緒にいたら、一緒にいるということ以外のなにもかもがダメになってゆくような予感がまとわりついていて、韓国へ向かう船のなか、ミツオへ痛み止めをやりながら「一緒に死ねるか」と、生きる・死ぬと正反対のものごとを示すみつおの顔がめちゃくちゃ好きだった。この先に待つものに期待を寄せることはなくて、ただ「一緒にいる」ことだけしかきまっていないふたりの道行が、はたしてハッピーか、アンハッピーか。でもそれはふたりにもわかっていないし、もはや日本を離れたふたりにはどうでもよいことのなのかもしれない。

田中俊介さんは、良かった…。
あんなにもバリエーションのある「殺すぞ」。怒りもあれば、虚勢もあり、それがひたひたに含まれた言い方をするので、この人はすごい人だなあとおもった。
あと、ダブルミンツを見た後、ボイメンの色んな動画を見て、もう一度ダブルミンツ見直したけど、ボイメンの田中俊介さんとダブルミンツ田中俊介さんがリンクしないので、めっちゃ集中して映画が見れた。田中俊介さんのパーソナリティとは切り離して「みつお」の存在を実感した。

あと、警察のひとが、佐伯のとなりに座るみつおのことを「かわいいですね」ってわざというんだけど、一般の「かわいい」で想像する男の子とみつおは全然ちがうと思うんだよね。いわゆる美少年じゃない。でもみつおのこと「かわいい」っていうあの瞬間をわたしは「めっちゃわかる」って思うんだよね。だってそこにある「かわいい」の下地は「愛でる」という意味でなく「玩ぶ」の意味だと思うから。

たまーに、めっちゃシュールで人間味のある瞬間がいくつもある。
病院の外で佐伯の「用事」を待っているとき、部屋から外へ落とされた人見つけて「だいじょうぶですか? きゅうきゅうしゃよびますかぁ?」ってツンツンするみつおとか(佐伯のやったことだなんてちっともわかってないふう)、みつおがいなくなった後、部屋中(ひとの部屋)むちゃくちゃ壊しまくって暴れるミツオが、ふいに冷静になって、携帯を取り出して佐伯呼び出すところとか。お荷物だったはずのみつおを最後送り出すとき、ふつうに「さみーな」って声かける佐伯の部下とか。
これらのシーンを他の皆さんがどう受け止めたのかはわからないけど、生活のなかに暴力が切り離せない社会っていうものを体感したことがないわたしには、こういう緩急みたいなものが、すごく当たり前の、ふつうの出来事みたいにして見えて、めちゃくちゃ良かった。

しばらくして、色々レポートなどを漁った。中村明日美子先生が「(みつおが)原作よりかわいいので刮目せよ」とおっしゃっていて、田中さんのみつおはめっちゃ可愛く仕上がってんだなあと思った。あと、長い準備期間のあいだ「市川光央」で飲食店の予約取ったり領収証切ってもらったりして、みつおとして生活してた田中さんのおはなしとか。